寺田家と流山本町

寺田家は、江戸初期に江戸川が開削され、流山村ができたころに最初に移住してきたという「六軒百姓」の内の1軒でした。
寺田家の所在した江戸川沿いの流山本町通りは、江戸時代から明治時代にかけて、米などの物資が集荷された江戸川の水運業やみりん醸造業などで栄え、今でいう物流の集積地としてにぎわい、流山本町通りには60軒を超える店舗があったといわれています。
寺田家については、当時の記録に「寺田いさば(五十集)や」と書かれており、お茶以外に乾魚や生活雑貨等も扱っていました。

1888年(明治21年)に利根川と江戸川を結ぶ水運ルートとして関東の物流を支える役割を担う利根運河の建設工事が始まると、1890年(明治23年)の利根運河の開通にあわせ、流山本町通りには土蔵造りの建物が増えました。
寺田家においても、1889年(明治22年) に寺田家第6代当主 寺田伊助氏が施工主となり、黒漆喰磨き仕上げの土蔵造りの建物が店舗兼住居として建てられました。建築総工費は当時の金額にして624円93銭であったそうです。

寺田家第11代当主 寺田英一氏が戦後に世襲した折、店名を「寺田園茶舗」と改名し、1963年(昭和38年)頃まで1階は茶舗として営業、2階は住まいとして使われていたが、店舗を移転してからは長く倉庫となっていました。

寺田園茶舗は、2010年(平成22年)8月1日に、過去と現代をそして人々を結ぶ拠点として建物をリノベーションし「万華鏡ギャラリー寺田園茶舗見世蔵」となり、観光情報の発信と市民交流の場として新たに生まれ変わりました。
茶舗として使われていた1階部分を市内在住の世界的万華鏡作家・中里保子さんの作品などを展示したギャラリーとして活用。
さらに、この寺田園茶舗は、2011年(平成23年)7月25日に「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として「国登録有形文化財(建物)」に登録されました。これは流山市では登録文化財の第2号となります。

2019年(令和元年)に流山市古民家再生プロジェクトが発足した後、2022年(令和4年)8月1日、歴史ある建物はそのままに内装をリニューアルし「万華鏡ギャラリー寺田園茶舗見世蔵」から「流山万華鏡ギャラリー&ミュージアム」に店名を改名。世界的に活躍する万華鏡作家・中里保子さんの作品をはじめとする国内外の作家の万華鏡を展示・販売しており、流山本町地域の観光名所の1つとなっています。